1992年、93年と連続日本一に輝いてから、5年という歳月が流れた。

 常勝を義務づけられ、東日本ではクラブチーム最後の砦ともいえるアサヒビール・シルバースター。その間にチームの顔たるQBは“怪物”東海辰弥から京都大の後輩・金岡禧友へとバトンタッチし、最後の日本一に輝いたときの先発メンバーで現在もロースターに名を連ねるのは攻撃が5人、守備はわずかに3人しかいなくなった。
 この生まれ変わったシルバースターが、今まさに4度目の頂点に上りつめようとしている。

 覇権奪回へ向けて大きくプラスに作用しているのは、EAST最終戦の日産プリンス東京パルサーズ戦に14−17と敗れたことだという。
 ディビジョンを1位で通過し、ファイナル6のシード権も獲得するはずだった予定が狂うことになったまさかの敗戦だが、阿部監督は「あの負けで選手たちのコーチ、スタッフに対する依存心がなくなった。『自分たちのチーム』という意識が出てきたんじゃないかな」とチーム内に生まれた変化を解説する。

 目覚めた選手たちは、1回戦で松下電工インパルスに敢然と立ち向かった。QB金岡のオプションキープを軸とする今季初めて繰り出すオフェンスに、エースRB中村、TE加藤、WR今野らが彩りを加えた。
 佐々木主将に率いられた守備も奮闘。何もできずにインパルスに敗れ去った昨年の記憶を完全に払拭するかのようなパフォーマンスで26−10の快勝。まずは第一のリベンジを果たした。

 そして準決勝は前年度王者の鹿島ディアーズだ。ディアーズは94年の東日本Aブロック第3戦で21−24と逆転負けを喫すると同時に、ライス3連覇の夢をも断たれた相手。
 その“宿敵”に対し、最初の攻撃シリーズで金岡からWR中尾へのスクリーンパスで先制すると、アキレス腱の負傷から復活したRB野村の23ヤードTDラン、DL三好のファンブルリターンTDなどで次々と加点。
 最後は金岡から野村への20ヤードTDパスで第二のリベンジを締めくくった。

 阿部監督は「よかったよ。一番欲しいのは東京スーパーでの勝利だし、ライスボウルでの勝利だからね」と興奮気味に一気にまくしたてた。
 前回の日本一シーズン、まだ新人だった金岡は「今季は自分や主将の佐々木よりも次の世代、たとえばRBの中村とかが主体性を発揮してチームを盛り上げてくれた。そこが5年間での成長でしょう」と語る。
 一方、阿部監督は5年前と比較して「全体のバランスで戦うようになったところ」がチームとしての成長なのだという。
 「力のある者、勝ちたい者を試合で使うのは当然だが、若い選手とベテランの選手ではまだまだ勝利に対する執念が違う」。
 勝利の味を知っているベテランと才能あふれる若手、これまで以上に両者がうまくかみ合っているのが今季のシルバースターだともいえる。


FINISH RESULT 1998
 9月15日 47- 6 vs住友銀行スプリングス
 9月23日 45- 7 vs東海銀行レッドウェイヴ
10月 1日 24- 7 vsすかいらーくスカイラークス
10月19日 60- 7 vs東京三菱銀行センチュリアンズ
11月 7日 14-17 vs日産プリンス東京パルサーズ
11月15日 FINAL6 26-10 vs松下電工インパルス
11月29日 FINAL6 38-13 vs鹿島ディアーズ
12月16日 TokyoSuperBowl 24-45 vsリクルートシーガルズ